乗数効果
'''乗数効果'''(じょうすうこうか、multiplier effect)とは、一定の条件下において有効需要を増加させたときに、増加させた額より大きく国民所得が拡大する現象である。国民所得の拡大額÷有効需要の増加額を'''乗数'''という。マクロ経済学上の用語である。概要
簡潔に説明すると、生産者(企業や政府)が投資を増やす→国民所得が増加する→消費が増える→国民所得が増える→さらに消費が増える→さらに国民所得が増加する→さらに消費が増える→・・・という経済上の効果を意味する。経済学的な数式分析を行うと、この増加のサイクルは投資の伸びに対して乗数(掛け算)的な伸びとなることから、'''乗数効果'''と呼ばれている。尚、ケインズ派の乗数理論においては、不完全雇用の経済が前提とされている。次のエントリ
投資乗数
今各家計の可処分所得が1単位(たとえば一万円)増加したとき、平均してその割合βを消費し、1-βを貯蓄に回すとする。(0≦β≦1)。β、1-βはそれぞれ'''限界消費性向'''、'''限界貯蓄性向'''と呼ばれる。さて、企業や国家の投資により、全家計の可処分所得の合計値がX円増加したとすると、家計はそのうちβX円だけ消費に回す。このβX円は企業の収入となり、それは給料として再び各家計に入る。すると家計はこのβX円のβ割にあたるβ2X円を消費に回す。このβ2X円は企業経由で再び家計に入り、家計はそのβ割にあたるβ3X円を消費に回す。以下、これが繰り返されるので、最終的に総消費は
X + \beta X + \beta^2X + \beta^3X + \cdots = \frac{X}{1-\beta}
増加する。
すなわち、最初に行われた投資Xの1/(1-β)倍分だけ消費が拡大する事になる。
例えばβ=0.9であれば、1/(1-β)=10倍も消費が拡大する。
この1/(1-β)の事を'''乗数'''といい、1/(1-β)倍消費が拡大する現象の事を'''乗数効果'''と呼ぶ。
なお最初に投資されたX円は、上述した乗数効果のサイクルのどこかの段階で家計の貯蓄となり、X円全てが貯蓄に回った段階でサイクルは終了する。従って消費が乗数倍されるのに対し、最終的な家計の貯蓄は投資額と同じX円である。次のエントリ
別の計算方法
乗数効果を異なる視点から導く事もできる。今外国との輸出入がないとすれば、一国全体の総消費Yは家計の支出Cと政府の支出Gと企業の投資支出Iの総和になる(所得恒等式):
消費された金額Yは利益として企業に入り、そして給料の形で家計へと戻ってくる。すなわち、総消費Yは家計の所得の合計値に等しい。
限界消費性向βの定義より、家計は所得Yうち割合βを支出する。すなわち、
以上の式を整理すると、
従って政府ないし企業が支出を増加させる事でG+IがXだけ上昇すれば、Yは\frac{X}{1-\beta} だけ上昇する事になる。すなわち、最初に行われた投資Xの1/(1-β)倍分だけ消費が拡大する。次のエントリ
貯蓄のパラドックス
前述用に、なお最初に投資されたをX円とすると、最終的な家計の貯蓄は投資額と同じX円である。これは、貯蓄がマクロ的には投資と一致することを意味している。すなわち総投資が変化しない限り、総貯蓄が変化することはない。日常的な感覚(ミクロ)によれば、投資ができる分量は貯蓄された分量に制約されており、貯蓄をすればするほど大きな投資も可能になるように見えるが、マクロ経済では単年度の追加的な投資量によりその年の追加的な貯蓄量が決定されており、このことを貯蓄のパラドックスという。マクロ経済で単年度の貯蓄量を増やそうと当年度の投資量を減らしたとしても、当年度の貯蓄量は減ることになる(参照:合成の誤謬)。次のエントリ
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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