法人
'''法人'''(ほうじん、、)とは、自然人以外で、法律によって「人」とされているものをいう。「人」とは、法律的には、権利義務の主体たる資格(権利能力)を認められた存在をいう。つまり法人は、自然人以外で、権利能力を認められた存在ということになる。日本においては、法人は、一般社団・財団法人法や会社法などの法律の規定によらなければ成立しない('''法人法定主義'''、)。
法人の法的主体性
法人の人権享有主体性、権利能力、行為能力については各種の議論がある。● 法人の人権享有主体性
日本国憲法には、法人が人権の享有主体になるかどうかの規定がない。この問題について、最高裁判所は、八幡製鉄事件において、憲法第3章の保障する権利は性質上可能な限り内国の法人に保障されると判示した(最大判昭和45年6月24日民集24巻6号625頁)。
● 法人の権利能力
法人には権利能力が認められる。これこそが、法人が法人たる所以である。もっとも、その範囲が問題となる。日本の民法は、法人の権利能力に対しては極めて謙抑的な態度をとり、において「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた'''目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う'''」と規定している。これは、英米法におけるUltra Viresの法理によるものである。判例は、同条のいう「目的の範囲」を柔軟に解釈している。 八幡製鉄事件の判決では、定款に定めた目的の範囲内で権利能力があるが、目的の範囲内とは、明示されたものだけではなく、定款の目的を遂行するのに必要ならすべての行為が含まれるとした。
● 法人の行為能力
法人が単独で法律行為を行うことができるかどうかを法人の行為能力という。これは、法人擬制説と法人実在説で結論が異なる。法人擬制説では、法人とは法が特に擬制した権利義務の帰属点に過ぎないから、行為能力を認める必要はなく、代理人たる理事の行為の効果が法人に帰属するという構成をとる。対して、法人実在説では、法人は自ら意思を持ち、それに従い行為するのであり、法人の行為能力が認められるということになる。次のエントリ
法人の設立と監督
法人を設立するための要件は、法人の種類によって細かく分かれているが、これは、国家がどの程度法人を監督するか、という法政策の問題である。すなわち、国家による監督が必要な活動であれば特許主義や許可主義を採用することになる(法人の活動が不適切な場合には法律を改廃したり、主務官庁が許可を取り消したりする)。逆に,国家が法人の設立にまったく干渉する必要はないと考えれば、自由設立主義を採用することになる(日本においてこれは認められていない)。日本法により設立される法人について、国家の干渉度が強い順に並べると、次のようになる。
● 特許主義
特殊銀行、都市基盤整備公団・国民生活金融公庫などの公社・公団・公庫、独立行政法人等。
● 許可主義
設立は、主務官庁の裁量による。
民法が規定していた旧公益法人(社団法人・財団法人)。
● 認可主義
設立は、法定要件を備えての、主務官庁の認可による。主務官庁は、法人格付与に裁量権を持たない。
学校法人・医療法人・社会福祉法人・生活協同組合・農業協同組合・健康保険組合・中小企業等協同組合・地縁による団体。
● 認証主義
設立は、所轄庁の認証による。認可主義より簡易である。
特定非営利活動法人(NPO法人)・宗教法人。
● 準則主義
要件を具備すれば当然に法人となる。普通、登記・登録が必要である。
一般社団法人、一般財団法人、会社、労働組合、弁護士会、マンション組合法人。次のエントリ
社団法人(広義)と財団法人(広義)
法人は、大きく社団法人(広義)と財団法人(広義)の二つに分類される。伝統的な説明によれば、人の集合体(社団)に法人格が与えられたものが社団法人であり、財産の集合体(財団)に法人格が与えられたものが財団法人である。法人化によって人の集合体自体の権利能力が認められれば、その集合体の財産や取引を、個々の構成員の財産や取引から法的に分離することができる。社団法人は、こうしたことを可能にするための法技術である。通常、社団というためには一定の組織性が要求される(権利能力なき社団を参照)が、現実の社団法人の中には、一人会社(株主が一人だけの会社)のように社団性がないものも存在している。
また「人」とは、権利義務の主体であると同時に、「物」ではない、つまり所有権をはじめとする物権の客体ではない存在でもあるから、物を含む財産が法人になれば、他者の権利に属さなくなる。財団法人は、こうしたことを可能にするための法技術であり、その財産は誰かの自由意思によっては処分されず、ただ固定的な規定(設立者の設立時の意思)に従って運用されるものとなる(もっとも、これは本来の制度の理念であり、2008年施行の一般社団・財団法人法は、一般財団法人の定款を評議員会の決議で変更できると定めた)。次のエントリ
営利と非営利、公益と私益(非公益)
法人のうち、 (1)営利を目的とするものを'''営利法人'''と呼び、(2)そうでないものを'''非営利法人'''と呼ぶ。ここでいう'''営利'''とは、法人が外部的経済活動によって得た利益をその構成員(社員)へ分配することを意味している。(1)'''営利法人'''は、構成員への利益分配を予定しているため、常に社団である。財団については、そもそも利益の分配先である構成員が存在しない以上、利益の分配ということはありえず、利益の分配されない営利目的の財団の存在を認める実益がないからである。営利法人といっても、実際に利益を分配する義務まではなく、利益を社員(株主)に配当していない会社も少なくない。
営利社団法人のことを'''会社'''といい、会社法は株式会社、合名会社、合資会社、合同会社を定めている。なお、会社法における会社の営利性については論争がある。
(2)'''非営利法人'''は、一般法である一般社団・財団法人法により設立される'''一般社団法人・一般財団法人'''と、特別法(特定非営利活動促進法など)により設立される社団法人(特定非営利活動法人、労働組合、農業協同組合など多種)・財団法人(共済組合など)がある。一般社団法人・一般財団法人のうち、公益法人認定法により公益性の認定を受けた法人を'''公益法人'''(公益社団法人・公益財団法人)という。
なお、一般社団法人・一般財団法人は、事業目的に法律上の限定がないので、営利法人(会社)と同じく多種多様な事業を行うことができる。営利法人ではないから利益を社員に配当することはできないが、役員の報酬や従業員の給与を支払うことはできる。
2008年12月の一般社団・財団法人法施行前、一般法としての法人規定を有した民法は、(a)公益を目的とする(狭義の)社団法人・財団法人(旧公益法人、いわゆる民法法人)のみを用意していた。そのため、(b)公益を目的としない社団には、適当な法人形態を提供する一般法が長らく存在せず、ただ各種の特別法に適合する場合のみ(労働組合、農業協同組合、消費生活協同組合、信用組合など)、法人格を取得することができた。また、税制面の優遇もあったため、旧公益法人の設立には主務官庁の許可を必要とし、公益を目的としながら、規模・体制の面や官庁との人的つながりの面から、許可を得られない団体も少なくなかった。このため、事実上法人となるような実体を備えていても、民法法人や特別法の法人となっていない任意団体も存在する(権利能力なき社団)。
近年、福祉や文化、国際貢献、環境保護、研究あるいは同好活動、地域活動など、さまざまな非営利の団体活動が活発になり、それらの団体が財産を保有したり、個人・企業・行政を相手に贈与・売買・貸借・雇用・委託等の契約を行う便宜のため、法人格の取得を容易にする以下の特別法が制定された。1998年(平成10年)12月1日に施行された特定非営利活動促進法(NPO法)は、福祉、教育、環境、科学技術振興、経済活性化など一定の活動(特定非営利活動)を目的とする非営利団体に法人格取得の道を開いた。2002年(平成14年)4月1日に施行された中間法人法により、広く非営利・非公益の社団一般が法人格を取得できるようになった。しかし、(b)非公益目的の (2)非営利財団には、特別法がある場合(共済組合など)を除いて、法人格は与えられてはいなかった。
2008年12月に一般社団・財団法人法が施行されたことで、非営利・非公益の社団・財団が一般的に法人格を取得することができるようになり、法人格を取得できない不都合が広く解消された。もっとも、同法の施行によって権利能力なき社団・財団が認められなくなったり、姿を消したわけではない。次のエントリ
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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