言語
'''言語'''(げんご)とは、コミュニケーションのための記号の体系である。狭義には人間の音声による音声言語を指すが、広義には身振りなど音声以外の要素も含む。また、動物間のコミュニケーションや、コンピュータに指示するための記号体系を指す場合もある。
日本語や英語のように自然発生的に生まれた言語を自然言語と呼び、これに対して人為的に創作された言語を人工言語と呼ぶ。後者には、もっぱら人間同士によるやりとりを目的としたエスペラント、コンピュータの操作を目的としたプログラミング言語、それから人間にもコンピュータにも適したロジバンといったものがある。自然言語は、母語とする人々の存在を失うと使用されなくなり死語(廃語)と呼ばれる。
定義
狭義には、人間のコミュニケーション、相互作用を統べる規則の内、声にまつわる部分、あるいはその声の代替としての文字表記などにまつわる部分を指す。手話、トーキングドラムなどの例においても、おおよそ声によるコミュニケーションと対応している。ただし、かつて日本の手話言語学者は手話は音声語とは形態において異なるがゆえに、音声言語学とはまったく異なる言語学用語、文法用語によって研究されるべきであるという立場をとっていた。しかし、近年では手話といえどもれっきとした言語であるゆえに音声語と同様の言語学的手法、用語によって説明できるはずであるという立場が一般的となっている。近年では言語学関連の学会等で音声言語と共に手話言語学者の研究報告がプログラムにのぼることも珍しくない。
より広義には視覚言語、身体言語など声によるコミュニケーションに還元できない場合にも、コミュニケーションを統べる規則があれば、それを言語と呼ぶことがある。
また、動物の間の相互作用にも言語の存在を認める場合がある。例えばミツバチが蜜源を仲間に伝えるためのダンスを「ミツバチの言語」と呼ぶこともある。ただし、人間の多くの言語と比べ、動物の相互作用には、往々にして恣意的な規則(「リンゴ」という音がリンゴという果物の種類を指すという約束事など)が乏しく、生息環境や生与の能力に根ざしたやや必然性の高い表現手段が関与している場合が多い。(「歯をむき出すこと」が「相手に対する敵意」の表現となる、など)これは規則ではなく、単なる規則性である点でやや趣を異にする。
同じく、広義の言語の中に含まれることが多いのがコンピューターのプログラミングに際して参照される一連の規則(プログラミング言語)である。プログラムの機能は、コミュニケーションの一種であると考えることは不可能ではないとしても、典型的な人間の会話において言語が果たす機能と明らかに異なっている。また、規則が特定少数の人間によって決定されている点で狭義の言語と異なる。このため、プログラミング言語のように創作された言語を人工言語と呼び、日本語のような自然言語と区別する場合もある。次のエントリ
自然言語
厳密には、言語の定義には多くの困難が伴う。コミュニケーションの「規則」がどこかに明記されており人々がそれを参照しながらコミュニケーションが行われるわけではなく、実際人々が単一の規則に従っていないと考えさせる材料もある。方言のような地理的なバリエーション、新語の普及のような歴史的変化、言い間違いや言いかけに終わる発言など、文法として通常考えられる規則に反する発話などが、その例として考えられる。また、「声」を基礎とし、文字をその代替とする発想に対する批判を投げかける立場(『声と現象』)もある(言語哲学)。自然言語は母語として使用する人々の存在を前提として存在しているため、民族の滅亡や他言語による吸収によって使用されなくなることがある。このような言語は死語と呼ばれ、死語が再び母語として使用されることはヘブライ語の例を除けばほとんどない。
世界に存在する自然言語の一覧は言語の一覧を参照次のエントリ
起源
言語がいつどのように生まれたのか、生まれたのが地球上の一ヶ所か複数ヶ所かは、判っておらず、複数の説が存在するが、例えばデンマークの言語学者オットー・イェスペルセンは、以下のような説を唱えている。● プープー説 ("Pooh-pooh" theory)
思わず出た声から感情に関する語が出来たもので、爆笑から"laugh"「わらう」「ショウ(笑)」、嫌う声から"hate"「きらい」「ケン(嫌)」など。
● ワンワン説 ("Bow Bow" theory)
鳴き声から動物に関する語が出来たもので「モウ~」から"cow"「うし」「ギュウ(牛)」、「ワオ~ン」から"wolf"「おおかみ」「ロウ (狼)」など。
● ドンドン説 ("Ding-dong" theory)
音響から自然物に関する語が出来たもので「ピカッ!ゴロゴロ」から"thunder"「かみなり」「ライ(雷)」、「ザーッ…」から"water"「みず」「スイ(水)」など。
● エイヤコーラ説 ("Yo-he-ho" theory)
かけ声から行動に関する語が出来たもので、停止を促す声から"stop"「とまる」「テイ(停)」、働く時の声から"work"「はたらく 」「ロウ(労)」など。
この説は、集団行動をとる時の意味の無いはやし歌が、世界各地に残っている事からも裏付けられる。
生物学的な観点から言語の起源を探ろうという試みもある。最近の分子生物学的研究によれば、FOXP2と名づけられている遺伝子に生じたある種の変異が言語能力の獲得につながった可能性がある。さらにその変異は現生人類とネアンデルタール人が分化する以前の30-40万年前にはすでに生じていたとの解析結果が発表されており、現生人類が登場とともに既に言語を身につけていた可能性も考えられる。しかしFOXP2は言語能力を有しない他の多くの動物も持っていること、FOXP2の変異が言語能力の獲得の必要条件であるとの直接的な証明はまだなされていないことなどに留意する必要がある。次のエントリ
言語の変化
生物の場合には、進化が止まった生物が現在も生き残っている「生きた化石」と呼ばれるものがある。また、一見似ている2種類が全然別の種類から進化していたというケースもある。言語にも同じような現象が起きており、その変化の速度は一定ではなく、侵略・交易・移動等他民族との接触が多ければ、その時言語も大きく変化する。代表例として英語、フランス語、ルーマニア語、アルバニア語、アルメニア語等がある。逆に接触が少ないとほとんど変化しなくなる。代表例としてドイツ語、アイスランド語、ギリシャ語、スラヴ語派、バルト語派(特にリトアニア語)、サンスクリット語等があり、特にアイスランド語は基本文法が1000年前とほとんど変っていない。また共通語彙から、言語の分化した年代を割り出す方法も考案されている。
一つの言語の言語史を作る場合、単語・綴り・発音・文法等から古代 (Old)・中世 (Middle)・近代 (Modern) と3分割し、例えば「中世フランス語」等と呼ぶ。ただし古代については古代ノルド語、古代プロシア語、古代教会スラヴ語は「古代」を付けたままが、古代英語は 「古英語」、古代ギリシャ語は「古典ギリシャ語」が正式名称である。
最も新しい言語であり、また誕生する瞬間がとらえられた言語としては、ニカラグアの子供達の間で1970年代後半に発生した「ニカラグア手話」がある。これは、言語能力は人間に生得のものであるという考えを裏付けるものとなった。次のエントリ
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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